Time

仕事が早く終わったので映画鑑賞会に参加しました。今回はTime。最近レンタル解禁になった作品だったそうです。

世界観
・舞台は未来のアメリカ。
・遺伝子操作だかの技術が発達し25歳より肉体的には年をとらなくなった。
・但し何もしないとそこからの余命は1年。
・時間がなくなれば心臓発作で死ぬ。
・仕事をするなどして時間を稼ぐ。
・時間があるうちは25歳の肉体のまま生きられる。
・時間は他人とやりとり出来る。但し総量は増えも減りもしない。
・時間を商品やサービスと交換できる。お金と同じ使い方ができる。
・莫大な時間を持つ富豪と、時間が尽きて死ぬ恐怖に常に怯える貧民が存在する。

解説
先ず、誰でもわかるのはTime is moneyということ。それが間違いなくこの作品の主軸です。

ただ、もう少しこの話には背景があるのです。今回はガチMaxがお送りします。ちょっと長くて難しいかもですが、読んでいただけたら幸いです。☆(ゝω・)v

この映画の内容は「モモ」そのものでした。児童文学のモモをマトリックス風にした映画でした。

モモはドイツ人作家のミヒャエル・エンデ作の児童文学。モモのあらすじはこうです。

のんびりとした街がありました。そこへあるとき突然やってきた時間貯蓄銀行によって人々から時間が奪われてしまいました。その街に住む主人公の女の子のモモが時間貯蓄銀行と戦い、奪われた時間を解放し元々の所有者である人々に戻しました。モモのおかげで街の人々はまた以前のようなゆとりある生活を取り戻すことができました。

モモは話としてはまぁまぁ面白いですが、只物語を読んだだけでは意味が今一つわかりません。何故か?それは物語の背後にエンデが伝えたかったメッセージがありそれが本当の物語の柱だからです。本当に大事なのはこっちです。

モモに込められたメッセージについては「エンデの遺言 根源からお金を問うこと」という本に詳しく書かれていますので、ぜひ読んでみてください。

エンデは現代の貨幣経済の問題点を指摘しました。また解決策も提示しています。ちょっとうろ覚えだったり言葉足らずな部分もありますが、大体こんな感じです。

エンデの遺言の要約;(1)〜(4)
(1)貯蓄されるお金
・労働者が生み出した付加価値を持った物質の価値は時間とともに減少するため。、ためこまれずに消費される。
・一方、お金は時間とともに価値が減少しない、むしろ利子により増殖するため、将来のために積極的に貯蓄される。
・その結果市場に貨幣が足りなくなり、経済が回らなくなり不況となる。

(2) 利子により増殖するお金
・元々は労働によって生み出された価値とお金はイコールであった。
・しかしながらある時からお金を他人に貸し利子をとる商売が始まった。この時からお金の増殖が始まった。
・お金を借りる側は利子の分まで、物を作って販売し、お金を得る必要が生じた。沢山の商品をつくらねばならず、労働時間が増え、労働者からはゆとりの時間が減少した。
・お金を貸す側は労働をしないでも利子でお金を増やし生活できるようなった。その結果ゆとりの時間が増加した。
不労所得で生活する富裕層が増加はすればするほど、自分の時間を労働にあてることでしかお金を稼げない貧民は時間を失うことになった。
・貧民から資産家のもとに時間が流れる構造ができ、資産家は貧民から時間を盗んでいるとも言える状態となった。


(3)上記問題点を解消するために
・エンデはゲゼル理論を紹介している。
・「お金も物質と同じく時間とともに価値が減るべきである。」というのがゲゼル理論である。
・スタンプ紙幣等の形でこれは実現される。スタンプ紙幣とは例えば経過日数に比例してお金を払ってスタンプを押さないと使用できない紙幣の事である。
・時間とともにお金の価値は減少するため、お金が貯めこまれることが無くなり、経済が回るようになる。
・またお金がためこまれないことで不労所得で生きる資産家の発生を抑制できる。
・お金には2つの重要な役目がある。①価値を流通させる機能、②価値を貯蓄する機能。スタンプ紙幣は現代のお金に欠ける①の機能を補うものであり、普通のお金と平行して用いるのが現実的である。
地域通貨として、このシステムが実施された例は多々あり、成功例も多い。
・経済が急激に回らなくなる恐慌時にこのシステムが導入され、経済を回復させた例がある。
・しかしながら、国家以外が通貨発行権を持つことが危惧され、国家により地域通貨が禁止されることも多く、このシステムが拡大することの支障となっている。

(4)エンデのスタンス
・働いた人間、努力した人間が利益を得るべきという考えであり、共産主義とは本質的に異なる。
・現代のお金はその特質により、流動性、働いた者が利益を得るという点に支障をきたしているため、それを改善すべきである。
・資本主義のいきすぎた部分を修正するという意味で、修正資本主義と呼ぶ方がふさわしい。

映画に込められたメッセージ
映画にも上記のエンデのメッセージが込められていることは間違いないでしょう。映画のラストのシーンは画面に収まりきらないほどの巨大な銀行に立ち向かっていくシーンでしたね。これは世界全体に広がってしまった貨幣経済の弊害=富裕層による搾取の構造を壊していこうというメッセージでしょう。

映画ではそこまでダイレクトに表現していませんでしたが、それは抵抗にあうことを予想してできなかったのかもしれません。一見荒唐無稽なこの映画に込められたメッセージは何だろうと興味を持って調べてくれることを願って作ったのではないかと思います。

会長の理念
モモはJLS会長のブログのタイトルでもありますね。仕事と時間に追われるだけの人生ではなく、人との繋がりを大事にしたゆとりのある人生を送りましょうという会長の理念とモモのメッセージは一致しています。モモやエンデの遺言を読むことで会長の理念をより深く理解することができるでしょう。

以上が解説でした。これをきっかけに経済や社会に興味を持っていただけたら幸いです。

感想
富豪の娘が言っていた「悠久の時間なんて退屈よ」という言葉が自分にとって印象的でした。ただ時間があるというだけでは人は幸せを感じません。ダラダラと浪費するだけの時間よりも何かに熱中して取り組む時間の方が楽しいですよね。時間の使い方が大事です。

映画の中では富豪は1000年以上も生きられるという設定でしたが、現実世界では誰でもせいぜい100年です。限られた時間を大切に使っていきたいなと思いました。